猫の郵便 プラットホーム

【初夏の珍事】写真の夕焼けタラちゃんとは１１年の付き合いになる。初対面の時は既にオトナだったから、もう１２才を超えている。数奇な運命をたどり、耐えてよくここまで生きて来た。タラちゃんはミスター臆病、良く言えばミスター警戒、初めの頃は〝樹の上暮らし〟で、樹の下にフードを置くと一口くわえては駆け上る繰り返しをする恐がり。そのうち、近場で暮らすパンダ柄の蘭の花の弟分になり、いつでもどこに行くのでもくっついて行動を共にしていた。蘭くんが勢いよく木登りすれば真似してタラちゃんも駆け上り、蘭くんが東の川に散歩いけば後ろをお供していた。それでも蘭くんを抱っこ出来ても、タラちゃんに至近で接近は出来なかった。一番接近出来て蘭くんのそばにいる時だけ。あの頃がタラちゃんにとって楽しかった黄金期かな？


そして２０１１年の木枯らし吹く頃、二匹を引き裂く事件が起きた。誰にでも人懐っこい蘭の花が、真正面のノドを縦一文字に裂傷し、眉間を殴打され病院で緊急治療しなければいけなくなった。うずくまる蘭くんを捕まえキャリーに入れる一部始終を、タラちゃんがジッと物陰から見ていた。言葉のない猫、あの時のタラちゃんの気持は如何ばかりだったか。その後しばらくタラちゃんは同じ場所を根城にしたが、そこに新たに２匹（ラジオくんとプリーちゃん）が捨てられ、戦い敗れたタラちゃんが拠点を捨て放浪の旅へ。写真にあるように、あっちの道からこっちの道へ、こっちの生垣からあっちの生垣へ。気弱なタラちゃんは、その名を〝シバの女王〟という威風堂々の猫にも破れ、視界から完全に消えた。もう何年も過ぎ死んだものとあきらめていた。

本当に久しぶりにタラちゃんがオバケのように再登場したのにも悲しい経緯がある。それはタラちゃんが恐怖した天敵の〝女王さま〟が、神隠しのように忽然と失踪したからでした。初めは「また捨て猫か！」とザワッとしたが、見覚えある声と顔に直ぐそれと分かった。タラちゃんは物陰からうかがって、置き弁当でサバイバルしていた。あり得ない気質、数奇な運命、しかし驚くのはまだ早く、長い間押し黙っていた発散か、刻々とタラちゃんが変わって行く。警戒心バリバリだったのに自転車の後を付いてきて３か所を一緒に巡る。そして何と、浜のケイトリンたちと４日前から並んで一緒に食べ出した。＋同士－同士の磁石の関係だったのが、転じて「あ゛ーあ゛ー」と甘える声で近づいて来る。１１年目にして見る初夏の大珍事。あり得ない奇跡です。（脱字誤字は後で修正予定）




























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